鳥さん天国 -Chronicles of bird paradise-

野鳥大好き人間が暮らしたインドとインドネシアで出会った鳥たちを紹介しています。

Red-headed Vulture ミミハゲワシ (インドの鳥その34)

インドで野鳥を観察する魅力の一つに多くのハゲワシ類が見られるということがあります。
このぶろぐでは、これまで、ヒマラヤハゲワシHimalayan Griffon、エジプトハゲワシEgyptian Vultureを紹介しました。
今回紹介するミミハゲワシ Red-headed Vulture (Sacrogyps calvus)は、非常に数が少なくなっていると思われるハゲワシです。自分が出会ったのも、今回の写真の個体のみです。

場所は私の住んでいるところから最も近いウッタラカンド州の国立公園です。ゾウがいた川原を歩いている時に、川の反対側の岸に大きな黒い鳥が降りていました。スコープを覗くと、初めて見るミミハゲワシでした。
赤い頭と大きな嘴がまさにハゲワシの風貌です。ミミハゲワシの成鳥です。


その右側にはあまり顔が赤くない個体が1羽。アキシスシカと思われる大きな角のある頭骨の脇にいます。これはミミハゲワシの若鳥のようです。


アキシスシカの骨を時々つついたりして食事の仕方を学んでいるのでしょうか。


成鳥はあまり動かず若鳥を見守っています。


ミミハゲワシは、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅の度合いが(CR)Critically Endangeredとされています。これは、環境省のランクでは絶滅危惧IA類、WWFのランクでは、近絶滅種です。きわめて絶滅への危険性が高く、現在の野生の個体は1万羽以下と言われています。

ミミハゲワシを危機にさらしている主な原因は、家畜に使用されている薬品のジクロフェナクだそうです。ジクロフェナクは、家畜の関節痛の薬として使用され、その死骸を食べたハゲワシが腎臓などを侵されて死に至るということのようです。そういえば、自分が関節炎の薬として以前使用していたのがジクロフェナクを含んだテープだったことを思い出しました。現在は人間用の薬品として使用が禁止されたようで、別の薬になっていました。
自分が日常使用していた薬がハゲワシを絶滅に向かわせていたと思うと、たいへん恐ろしくなりました。

ミミハゲワシは、インドを中心として、インドシナ南部にかけて分布しています。

Alexandrine Parakeet オオホンセイインコ(インドの鳥その33)

インドでは、インコの仲間が市街地にも普通に見られます。日本でもペットが野生化したインコが見られますが、インドには、野生でもともと生息しています。

オオホンセイインコ Alexandrine Parakeet (Psittacula eupatria)は、スリランカを含むインド亜大陸の主に落葉樹林に見られます。ベトナムなどインドシナにも分布しています。

ワカケホンセイインコを大きくがっちりさせたような感じです。
全長は53㎝で、ホンセイインコの42㎝よりかなり大きく見えます。
大きく赤いがっちりした嘴と肩の赤いパッチが特徴です。
オスにはこのように喉に黒い輪があり、首の後ろにピンク色の帯があります。


ギャアギャアと大声をあげながら器用に木の実を食べます。


職場の森の大木の穴に巣があるようです。
この木は、講堂のすぐ近くにあり、人が良く通るところです。インドの人は、動物に優しいので危害を加えないようです。この個体はオスです。
オスもメスも雛に餌を与えに通うようです。


こちらはメスです。メスには、オスにある首の後ろのピンクや黒い首輪がありません。


スリランカでは、人により捕獲されることが多いため、数を相当減らしているようです。日本では、東京に野生化していることが日本鳥類目録に記載されていますが、もしかしたら、このように原産地で捕獲されたものが逃げ出したり放されたりしたのかもしれません。

Red Avadavat ベニスズメ (インドの鳥その32)

今回紹介するのは、飼い鳥としてもおなじみのベニスズメ Red Avadavat (Amandava amandava)です。

ベニスズメは、南アジアに広く分布し、インドでは北部の標高の高い地域や西の砂漠地帯、半島南部を覗いて広く分布しています。

日本では外来種としてアシ原などに野生化しています。

写真は、12月に近くの湿地で見たベニスズメです。
アシ原に続く低木の藪の中でちょっとお休みしている個体がいました。メスに似ているのですが、頭部に赤い斑点が見られるので、非繁殖羽のオスだと思います。繁殖羽の真っ赤なオスもきれいなのですが、この色合い、羽毛の先端の白い斑の置き方などもいいデザインとなっていると思います。


歩道の脇に地上で採餌している群がいました。
距離があったのでうまく写っていませんが、深い赤色をした繁殖羽のオスがいます。
右にいる緑色はメスです。

この鳥のような真紅の鳥が野生で見られると、気持ちが高まります。

Crested Serpent Eagle カンムリワシ(インドの鳥その31)

カンムリワシ Crested Serpent Eagle (Spilornis cheela) は、日本では宮古諸島と八重山諸島で見られる南の島のワシですが、インドでは、北西部の乾燥した地域を除いて広く分布しています。私の職場の森でも見られます。ここは緯度でいうと日本の鹿児島くらいです。カンムリワシの分布はインドからマレー半島、フィリピン、ボルネオ、スンダ列島ですので、ここのカンムリワシは北限のカンムリワシと言ってよいでしょう。

カンムリワシは、餌のカエルやトカゲを見晴らしの良いところで待ち伏せして捕るので、木の枝などにじっとしているところに出会うことが多いです。



なかなか精悍な顔つきです。


こちらは森の中に倒れている丸太の上にとまっています。
目先の黄色が鮮やかです。尾羽の太い白帯も見えます。


地上に降りました。獲物を見つけたのでしょうか。


冠がわかります。猛禽の風格を感じます。

Yellow-eyed Babbler キンメセンニュウチメドリ(インドの鳥その30)

インドの鳥の30番目にご紹介するのは、葦原の鳥です。

キンメセンニュウチメドリ Yellow-eyed Babbler (Chrysomma sinense)

日本ではシマセンニュウ、エゾセンニュウのように、センニュウ(潜入)というくらい葦原で声は聞こえるけれども姿が見えない仲間がいます。

キンメセンニュウチメドリはそれほどまでは潜入してばかりという感じではありません。

ある雨の朝、近所にある貯水池付近の草地です。
巣材を加えたキンメセンニュウチメドリが姿を現しました。
脚が長い!


全長約18㎝。先が丸い長い尾を持っています。
上面の茶色と下面の白がすっきりとしています。
何といっても赤いアイリングが特徴です。


和名は黄色い虹彩にちなんでいるのですが、つぶらな黒い瞳で虹彩までよく見えません。この個体には、黒い眉が見られます。


キンメセンニュウチメドリは、南アジアに分布しており、インド亜大陸では北部を除いて広く見られます。

Pied Cuckoo クロシロカンムリカッコウ(インドの鳥その29)

一般にカッコウの仲間というと、声は聞くけどなかなか姿を見られないことが多いです。ところが今回紹介するこのカッコウは、姿を見やすいし、似たような鳥は他にいないので識別もしやすいです。

クロシロカンムリカッコウ Pied Cuckoo (Clamator jacobinus)は、インドに広く分布します。灌木や葦原のような環境を好むようです。

このように、白と黒のはっきりした色合いがすっきり。
とさかも目立ちます。


鳴き声は、ピューとかピーとかといった金属的な声。


尾は長く翼に明瞭な白斑があります。


これは幼鳥
カッコウの仲間だけあって他の種類の鳥の巣に卵を産み付けて育てさせる托卵鳥です。托卵の相手はチメドリ類で、Jungle Bubbler がこの鳥の幼鳥に餌を運んでいるのを見たことがあります。


クロシロカンムリカッコウは、アフリカから東南アジアに生息、インドでは南部の一部で留鳥ですが、大部分は夏鳥です。冬はアフリカに渡るようです。

(初めシロクロカンムリカッコウとしていましたが、どうやらクロシロカンムリカッコウが和名らしいので編集で修正しました。白が先のほうが言いやすいのになぁ)

Orange-headed Thrush オレンジツグミ(インドの鳥その28)

私の本拠地の北インドでは、夏になるとインドの南部から繁殖のために渡ってくる鳥もいます。

今回ご紹介するオレンジツグミ Orange-headed Thrush (Zoothera citrina)もその一つです。

オレンジツグミは、トラツグミやマミジロと同じトラツグミ属(Zoothera)のツグミで、インドでは西部を除いて分布し、半島の南部では夏になると北のヒマラヤのほうに移動し、南部と北東部では留鳥です。オレンジツグミは、東洋区の大陸部と島嶼部に広く分布しています。

オレンジツグミは、あまり開けたところに出てきません。
夏、職場の森でわりと低いところにいるのを見ることができました。


森中に響き渡る声量で鳴いています。声の質はクロツグミより細く、時折ギュッと濁った声が入ります。


体の羽毛を膨らませます。


これは南部ケララ州で出会った個体。夕方林内の水たまりに水浴びに来たところです。南部の亜種(Z.c. cyanotus)は、北に夏鳥としてくる亜種(Z.c. citrina)と比べて、顔に2本の黒い縦斑が入ります。

トラツグミ属の中では唯一オレンジの明るい色をしている鳥と言えます。